日本政策投資銀行(DBJ)と日本交通公社(JTBF)が共同で実施した訪日外国人旅行者の意向調査で、新型コロナウイルス終息後の海外旅行意向は強く、行き先として最も人気が高いのは日本だという調査がまとまりました。
本調査は、、日本政策投資銀行が日本交通公社とインターネットを通じて行い、アメリカ、フランス、中国、韓国など12の国と地域に住む6200人余りから回答を得ました。
新型コロナウイルスの感染が終息したあと、海外旅行をしたいと思うか尋ねたところ「そう思う」「どちらかといえばそう思う」が全体の82%を占めました。そして、旅行したい国や地域を複数回答で聞いたところ、日本が46%でトップとなりました。2位は韓国の22%、3位は台湾の17%で、日本が旅行先として最も人気があることが分かりました。
海外観光旅行の検討を再開するタイミングとしては、 「抗ウイルス薬の開発など、新型コロナの脅威が消滅してから」、「渡航希望先の安全宣言後」、「自国の出国制限措置の解除後」という回答が多く、訪日外国人旅行者数が従前通りに戻るには相応の時間を要するであろう。
日本のどこが魅力?
外国人旅行者は、日本のどのような点に魅力を感じているのか、今回の調査では日本を訪れたい理由も複数回答で尋ねました。
▽ 日本のどのような点に魅力を感じているのか
1番目の理由は「行きたい観光地や観光施設があるから」の47%でした。 |
2番目は「食事がおいしいから」で43% |
3番目は「以前も旅行したことがあり、気に入ったから」で37%でした。 |
そして、調査の担当者が注目したのが、4番目の理由「清潔だから」の36%です。 |
終息後の訪日旅行に期待したいことについて尋ねたところ、アジア、欧米豪ともに「衛生面における配慮、清潔さ、消毒などのウイルス対策全般の継続」がトップ。幅広い乗り物・場所に、徹底した消毒、健康状態の確認、人数規制、多言語医療相談サービスの提供といった対策が求められている。また、「文化体験アクティビティの種類や質の充実、ブラッシュアップ」との回答も多かった。
フルパッケージは敬遠気味に、温泉旅館、民泊の人気が低下傾向
希望する旅行形態については、全体的に過去調査と比べてフルパッケージツアーの選択率が下がる一方、ダイナミックパッケージが東南アジア、欧米豪中心に上がる傾向に。一定人数以上での催行、バス移動、食事スタイルなどから3密が想起されやすいフルパッケージツアーが比較的避けられる様子がうかがえる。同行者は「配偶者・恋人」、「自分の子ども」の選択率が従来以上に高く、「感染リスクを避けるため、行動履歴がわかる近しい人」を意識している人が多いと推測できる。
「次はどのような宿泊施設に泊まりたいか」の設問では、過去調査では「温泉のある日本旅館」がアジア居住者、欧米居住者ともに最も人気が高かったが、新型コロナの影響で2020年度調査では選択率が下がった。
一方、アジア居住者の間では「日本旅館(温泉なし)」の選択率が上がっており、DBJ・JTBFは「日本旅館自体には宿泊したいものの、行動履歴が不明な人と共用で利用する温泉、スパやサウナなどでの感染に不安があると推察される。共同利用以外の風呂付客室の打ち出しや感染症対策に向けた取り組みに関する情報発信が求められる」と分析している。
また、「現地の人から有料で借りる家、アパート」(民泊)も選択率が下がっている。民泊は清掃などによる施設の安全性や清潔感で施設ごとに差があることも背景にあるとみられ、あらゆる部分で新型コロナが影響を与えていることが如実に表れている。
一方、旅行先として日本を選んだ外国人に複数回答で訪問したい地域を聞いたところ
▽「東京」が最多の47% 次いで ▽「北海道」が42% ▽「関西」が37% ▽横浜や箱根などの「東京近郊」が30%となりました。 |
他の国・地域と比較すると、日本は多言語対応に対する評価は全体的に低く、また、台湾等と比較すると新型コロナの被害が少ない国と評価されているとは言い難い。一方で、「買い物」、「食事」、「治安のよさ」等に加え、「清潔さ」が高く評価されている。
これらの結果を踏まえ、新型コロナ終息後の高い海外旅行意向およびアジアを中心とした日本人気を捉まえるためには、ウイルス対策全般の継続などの安全・安心に関する取り組みを徹底し、「清潔さ」という日本の強みを更に一層活かすことが重要であろう。
その上で、特に新型コロナへの不安度が高いアジアに対して、それぞれの言語で正確な情報発信を行うとともに、高単価かつ長期滞在を求める訪日外国人旅行者の取り込みに繋げるべく、リラックスや癒やしおよび体験型観光といった旅行者のニーズを満たすための準備を今の段階から進めることが重要であろう。